
右上の鶏肉と梅の和え物にオクラが入る筈だった。
『まだ大丈夫、まだ大丈夫。』
そう思い続けるものの、心の奥では
『いや、だめだろう』
という思いがあったのも事実で、その証拠にぼくは冷蔵庫の野菜室の隅に置いてあったそれに、二週間ほど視線を送ることはしなかった。
怖かった。
確認しようとする度に、もうそれは食べられないようになっているんじゃないかって、半分確信めいた迷いがよぎり、結局そのことに触れずに過ごしていた。
いつか真実を知る日が必ず来ることが分かっていたし、それを先延ばしにしているだけだということも分かっていた。
そして、その日とは今日のことで、ぼくは遂に現実に目を向けなければならなくなった。
それはぼくが想像していた通り、冷蔵庫の野菜室、その手前右隅に静かに佇んでいた。
でも、もうぼくの知っているそれではなかった。
ぼくはオクラに話しかけた。
「少し、痩せたんじゃないか」
オクラは答えた。
「そうかい。でも、見つけてくれてよかったよ。忘れられたのかと思っていた」
ぼくは首を振った。
「まさか。ずっと君のことを考えていた。でも…」
その先は言葉が出なかった。
でも、オクラは全てを知っていた。
もう料理には使うことのできない自分の身を、暗い冷蔵庫の中でゆっくりと理解していたのだと思う。
「ああ、分かっているよ」
オクラはそう言うと、ゴミ箱へと静かに落ちていった。
明日ぼくは頭の病院に行こうと思う。